洗足の住宅

■各階の断熱+左官材の配置方向

 

■設計趣旨
「コンクリート打放しのようなザックリした素材感の住宅で、開放感のある生活をしたい、でも寒いのは困る。」
最近、住宅の打合せに上がることが多い設問である。本計画もここからスタートしている。
上記の設問は、概ね次に変わる。
「断熱はしっかりやりたいけれど、外断熱だと外からコンクリートが見えないし、内断熱ではインテリアに代わり映えがしない。どうしたらいいのですか。」

この住宅は洗足池の西側、八幡神社の杜に程近い閑静な住宅地に建っている。夫婦と子供3人の居住のために、容積率や斜線規制をクリアしながらボリュームを最大限確保したnLDKタイプの間取りとしている。前述のような生活イメージに応えるために、断熱/コンクリート打ち放しの問題と素材感の関係、そしてそれらの構成の仕方を工夫してみた。そうすることがコンクリート造という明確に内外を分ける形式をずらすことにも通じ、密集した都市空間の中でも、開放感のある暮らしが実現できると考えたからである。

構造的には、RCの薄肉ラーメン構造の3階建である。道路側である南側の採光や駐車場間口、3階北側での外部テラスとの連続感をとるため、南北面は大きな開口面としている。そのために約6mの間口を、東西両サイド2枚の構造壁でささえる形式とした。

そして今回は、外断熱か内断熱の判断ではなく、それぞれの構造壁の一方向(東面)側に断熱材を設けてみたのである。片面は打ち放しで、反対面は断熱材の上に砂利を左官しザックリ仕上げた壁を、2枚とも同じ向きに配置した。こうすると、東側の壁は外断熱(外壁:左官仕上/内壁:打ち放し)、西側の壁は内断熱(外壁:打ち放し/内壁:左官仕上)となる。つまり外観としては、東側からは左官、西側からはコンクリート打ち放しというように、向きによって佇まいが変わり、そして内観では打ち放しかそうでないかでは無く、コンクリート/左官の両方の素材感に挟まれるのである。

加えて、東側の構造壁を、一部押し込みへこませたように蛇行させてみた。(この操作は梁間方向の耐力壁確保にも役立つ。)内部空間は、2枚の壁の仕上げ(砂利の左官/打ち放し)が、近づいたり離れたりする間を仕切ってつくっている。そして外壁の砂利の左官が内部に入り込むことで、コンクリート打ち放しの閉じたイメージの中にも、局所的に外部的なザックリした感覚の空間が現れる。廊下や階段などによる室内の移動を通じて、代わる代わる現れる明るさや暗さ、それぞれの素材感が、日々の生活の中で折り重ねられ経験されていくのである。

この建物は単純に部屋を切り分けたnLDKタイプである。まとまった大きな空間や吹き抜けなどはない。それぞれの場所の質感は局所的にしか作りえない。しかし断熱の問題から始まった素材感の構成や構造形式の操作によって、局所的に捉えられる感覚がひとつながりの経験として繰り返されるように、ここの生活の時間軸に差し込んでみた。そうすることが、内外を明確にしきるコンクリート造の住宅形式をずらし、感覚の総体としての「開放的な空間」が作り出せると考えたのである。

押尾章治


(撮影:鈴木研一)

建築設計: UA/ 押尾章治、伊東克明
構造設計: オーク構造設計/ 新谷眞人、梅澤由香利
設備設計: アイシステム設計/ 澤田守
施   工: 成常建設/ 滝沢靖
用   途: 専用住宅
家族構成: 夫婦+子供3人
敷地面積: 117.66㎡
建築面積: 70.58㎡/延床面積:184.08㎡
構造規模: RC造地上3階

外部仕上げ
屋根  :RC+外断熱シート防水
外壁 :RC打放し+撥水材
:RC+断熱システム工法+砂利左官
開口部:アルミサッシ
:ステンレスサッシ
:スチールサッシ
内部仕上げ
天井:PB 9.5AEP
壁  :RC打放し+撥水材
PB12.5AEP
RC+断熱システム工法+砂利左官
床  :タモフローリングOSCL
建具:ホワイトアッシュOSCL
家具:ホワイトアッシュOSCL

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