宙博2009

宙博2009会場の見下ろし。雲海のように広がる銀色バルーンの合間に、宇宙に関する最先端の展示が見え隠れる。 

■宙博2009会場デザインコンセプト

「宙博2009」では、宇宙のような感覚の展示空間を作ってみたいと思った。
でも宇宙的な感覚とは何かというと非常に難しい。ここでは「階層構造」にそれを見出そうと考えてみた。

東京フォーラムの展示会場は、天井の高さが2層分吹抜けている(1層4.5m高×2層分)。上部階は外周をガラスに囲まれており、地下鉄の駅からアプローチすると、1層上から会場内を見下ろすことになる。今回はその階の床の高さに合せて、ヘリウムガスで、銀色アルミバルーンを層状に浮かべてみた。丁度、上から会場を見下ろす足元の高さ一面に、薄く澱んだ雲海が作られ、向こうの端までずうっと拡がっていく感じとなった。これにより、会場空間全体が上下2層に分けられたのである。展示室内は上空が銀色の雲に覆われた空間となり、反対に上階レベルから見下ろすと、雲の合間に様々な展示や人の動きが垣間見える。つまり、「地表の生活 − それを包む空間 − 層状の雲 − さらに上部空間」というような、重力にとらわれることで現れる、層状に重なる構成としたのである。惑星の表面に現れる「階層構造」の表現である。それにより地球のような惑星を、宇宙から眺めている感覚が作り出せると考えたのだ。そしてその雲の合間の地上には、無数の丸い平面の展示とそれらを囲む人々の活動が、様々に浮かび上がるのである。

ライティングは、放電灯のスタンドタイプを採用した。展示照明としては、通常は使わないものであるが、ザックリした点光源による光は、丁度宇宙船が月面探査の時などに使うスタンド照明をイメージさせる。丸く照らし出された展示スペースには、漆黒の宇宙空間を解明する期待感が高まるのである。

また会場ではサインも工夫してみた。各展示は宇宙研究の最先端であるが故に、当然のことながら極めて専門的で難解である。しかしサイン計画としては、その難しい展示内容を日常的な分かりやすい言葉に還元して表現し直し、銀色バルーンで上空に浮かべてみた。先端テクノロジーと日常生活との関連を、簡単ななぞかけと答えでサイン化することで、子供から大人まで、誰でも容易に想像できる「宇宙」として展示できればと考えたのである。

押尾章治

■開催概要
名称 :宙博(そらはく)2009 http://sorahaku.jp/
日程 :2009年12月3日(木)~6日(日)
会場 :東京国際フォーラム 展示ホールB
主催 :宙博実行委員会
運営 :ナノオプト・メディア

■製作概要
プロデュース:S2/迫村裕子. 白倉三紀子
会場構成:UA/押尾章治. 伊東克明
照明計画:ぼんぼり光環境計画/角舘政英. 野沢潤一郎
グラフィックデザイン:文京図案室/三木俊一.
コピーライティング:みのだ文案オフィース/蓑田雅之
施工:アコースト.

ザックリとした放電灯のスタンド照明で、「宇宙の展示」にひかりをあてる。手前は宇宙太陽光発電コーナー。上からの会場の俯瞰風景。手前左は探査ロボットのデモ・コーナー。右は、宇宙の流れに応答する地球の自然環境空間を展示した、浜田充/STARBURSTARによる”Natural Timeless Space”。宇宙に関する最先端のレクチャーが楽しめる講演会コーナー。
会場風景。宇宙子ども絵画展が見える。根本的な宇宙のナゾに迫るために組織されたIPMU(数物連携宇宙研究機構)の展示。モニターに重力レンズによる光の屈折が映し出されている。

微妙な浮遊感のアルミバルーンが触って楽しめる。子供にも大人にも大人気の体験コーナー。

会場風景。奥には時速370kmで走る電気自動車も展示されている。(Eliica、テスラ・ロードスター)宙博会場の上空は、雲海のような銀色バルーンで覆われている。東京国際フォーラムの吹抜けホールより宙博会場入口を見下ろす。